トマス杯の行方を正確に言い当てることは、運が味方しなければ不可能だ。これまでの大会と同様に、今年の大会もアジア勢とヨーロッパ勢との厳しい戦いになること必至だからだ。2004年、ジャカルタで開催された前回大会の決勝戦では、中国がデンマークとの接戦を制してトマス杯を自国へ持ち帰った。今年もこの2チームが本命視されるとしても、他のチームも決して引けをとっていない。
現時点では各大陸の予選が終了していないため[訳注:アフリカ代表が2月22日に決まる以外は、19日で予選終了だが、このニュースが書かれたのは2月15日のため、このような表記になっています]、日本での本選に出場する国は開催国の日本と前回大会で優勝した中国以外は確定していないが、有力チームを見てみよう。
現在、トマス杯を持ち帰る可能性が高い有力候補は、中国(前回優勝国)、デンマーク、マレーシア、インドネシアの4カ国である。2004年に広州で行われた大会でベスト4に残ったこの4カ国が、今年のトマス杯で再び勝ち残ったとしても何ら不思議はない。各国ともそれだけの実力を備えている。
前回優勝の中国,
はさらに強力なチームになった。男子シングルス陣は、リー・ヨンボ監督が誰を起用するか頭を悩ませるほど充実している。ここ数ヶ月で中国チームの常連メンバーになったリン・ダン、バオ・チュンライ、チェン・ホンをはじめとして、少なくとも6選手がシングルスで戦う実力を備えている。2003年の世界チャンピオン、シャー・シュエンザは、今年1月に行われたスイス・オープンで決勝まで勝ち進み、完全復調をアピールした。シャーの持つ経験は、これまでもチーム対抗戦で常に大きな貢献をしてきた。さらに、安定感抜群のチェン・ユウはいうまでもなく、若干19才ながらそのスピードとスタミナで世界のバドミントン界を震撼させた北京の新星チェン・ジンもいる。 人選に困るほどの選手層の厚さは、後半の大切なゲームまで主力選手を温存させることができるため、中国の強力な武器になることは間違いない。唯一の不安材料は、数年前に行われたチーム対抗戦の男子ダブルスで最適なペアを中国チームが組めなかったことが挙あげられるが、現在、中国チームはカイ・ユンとフ・ハイファンがトップダブルスとしてペアを組んでいる。先の全英オープンでは不本意な成績しか残せなかったとはいえ、確実に自信をつけ始めている今、男子ダブルスの不安も早晩解消されるだろう。さらに、フ・ファイハンの誇る世界最高時速の332kmスマッシュという武器も中国にはある。もし5試合目が必要になっても、中国の第2ダブルスには、共に飛躍的成長を遂げているシェー/グオ組がいる。中国ダブルス陣の中でも特にシェー・ツォンボーは、持ち前の見事な体格と強い精神力によって、昨年の世界選手権混合ダブルスで銀メダルを獲得するなど要注意選手だ。
ヨーロッパに目を移すと、最も可能性が高いのは、いまだトマス杯に手が届いていないデンマークだろう。このスカンジナビアのチームの多くの代表選手は今回が3度目の出場となるため、事実上、今回が最後のトマス杯になる。デンマークのファンやメディアからは、今年こそ“デンマークの年”になると期待されている。偉大な選手イェンス・エリクセンもその1人で、名誉ある全英オープンではマーチン・ルンドガードと組んで2度目の栄冠を手にするなど、プレーヤーとして有終の美を飾ろうとしている。共に32歳を過ぎた経験豊富なこのペアがゲームで主導権を握り、2人だけの暗黙のかけひきを駆使して若い対戦相手を翻弄すれば、チームの鍵となる可能性もある。これまで抜きん出た2組を抱えていたためデンマークチームの第2ダブルス選びは容易だったが、今年はそれが難しくなりそうだ。2003年の世界チャンピオン、ラスムセンとパークスが最近ペアを解消したため、他の3組にも東京行きの切符を手にするチャンスが生まれた。パースク/レイバーン組、あるいはラスムセン/ステフェンセン組。そしてもう1組のボー/モーゲセンの若いペアは、トマス杯のような大きな大会に出場した経験こそないものの、これまで多くの試合で実績を積んできている。男子シングルスでもデンマークは、ゲードとケネス・ヨナセンの好調な2選手に加え、おそらくカルダウが第3シングルを務める強力な布陣で臨んでくるだろう。デンマークには他にも有望な選手が控えているし、実際に代表選手の選考はまだ行われていない。シングルス、ダブルス共に非常に経験豊富な選手で構成されたチームは、ヨーロッパに初のタイトルをもたらす可能性を十分に秘めている。
インドネシアはトマス杯を大きな目標の1つと位置付けていて、いつものようにハングリー精神に満ちた選手陣が大きな武器となるはずだ。2年前、インドネシアは自国で開催された大会でトマス杯を逃した悔しさもあり、虎視眈々と王座を狙ってくるのは間違いない。しかし、最近のインドネシアの試合を見ると結果が出ておらず、好調とはいえないのが不安材料だ。ソニー・ドイ・クンコロは長い間怪我に悩まされており、好調時の状態に戻りきっていない。世界選手権とオリンピックの両チャンピオンのタウフィック・ヒダヤットは、2月4日に行われた自分の結婚式の準備に忙殺され、最近のトーナメントをすべて欠場したため実力の片鱗すら見せていない。しかし、インドネシアのこの天才プレーヤーは、いつものように世界中の強敵をファイティングスピリットでなぎ倒し、東京で主役を務めるだろう。サイモン・サントソは、おそらく第3シングルとして勝負を決めるべくコートに送られるだろう。もしも最終第5試合まで勝負の行方がもつれるような場合、第3試合に登場するサイモン・サントソに大きなプレッシャーがかかる。 伝統的にインドネシアは男子ダブルスに強い。シギット・ブディアルトとチャンドラ・ウィジャヤ組は世界ランキング1位にふさわしく、優勝を狙うべくコートに復帰している。チームメートのアルベン/ルルクのペアも実力差はそれほどなく、どの大会でも史上最高の“第二の矢”として、理想的な第2ダブルスとなるはずだ。もし両ペアをもってしても相手が倒れなかったら、同じようにどんな対戦相手でも打ち負かす力を秘めたキド/セティアワン組とリンペレ/ヒアン組が控えている。両ペアとも世界ランキング15位以内であることから、言うまでもなくインドネシアは注目すべきチームの1つである。しかし、日本行きの飛行機に乗るには、予選でタイという油断できない相手との戦いに勝たねばならない。
マレーシアは、シングルス、ダブルス共に強力な選手陣がいるため、トマス杯に4番目に近い国といえるかもしれない。多彩なプレイスタイルの選手を揃えている点ではどの国にも引けをとらず、年齢層も若手からベテランまでかたよりがない。言うまでもなくリー・チョン・ウェイがマレーシアの先陣を切るが、他にも対戦相手にとっては脅威となる選手が名を連ねる。例えばウォン・チューンハン、ハフィズ・ハシム、クァン・ベンホンなどの選手も、いったん波に乗れば世界のどの選手でも負かすだけの実力を備えていて、決して楽な相手ではない。数週間前に行われた最も権威あるグランプリシリーズの全英オープンで、マレーシアのダブルス陣はインドネシアと中国のペアを破り、ベスト4に3組も進出するという快挙を達成し、絶好調振りをアピールしている。リー・ワンワー/チューン・タンフックのペア、チャン・チョンミン/クー・ケンケット?)のペアがダブルス1と2の布陣になるはずだが、名声では劣っても才能では決して負けない選手が若手の中に控えており、隠れた武器となる可能性はある。実際、これまでのトマス杯においても、マレーシアは最高のパフォーマンスを大舞台で発揮して対戦相手にひと泡吹かせてきた。
韓国もチーム対抗戦でしばしば好成績を残しているため、優勝候補の一角に加わることができたはずだ。しかし、これまでダブルスを支えてきたベテラン選手が、最近、現役を引退したため、非常に若い選手でこのメジャー大会に臨むことを考えたとき、最後まで勝ち残ることには懐疑的にならざるを得ない。キム・ドンムン/(ハ・テコン)組に続き、イ・ドンス/ユ・ヨンスン組も引退したため、突如としてイ・ジェジンとジュン・ジェサンという新しいペアが期待を一身に背負うことになった。その期待にたがわず、このペアは非常にすばらしいスタートを切ったが、後に2組のペアに分かれてしまった。しかし、ジュンがイ・ヨンデとペアを組んでドイツオープンのタイトルを勝ち取ったように、この分裂は新しいパートナーを更に高いレベルに引き上げる可能性もあるため、決して悪いアイデアではない。男子シングルスでは、イ・ヒョンイルが、最近行われた全英オープンで韓国人選手として初めて決勝まで進み、調子が戻ったことをアピールした。しかし、2004年のアテネオリンピックで大活躍したソン・スンモ(銀メダリスト)とパク・スンファンの2人は、まだ当時の状態に戻っていない。ただし、韓国には、海外での経験をそれほど積んでいない、若く、才能ある選手が数多くいることを忘れてはならない。トップを走る4カ国に続く国として最有力であることに間違いない。
タイ、イングランド、ドイツもトマス杯の本選で大きな役割を果たす実力を備えているが、まずその前に予選を突破しなければならない。インドネシアと同組という極めて厳しいブロックで予選を戦わねばならないタイは、本選出場が難しいかもしれない。しかし、もしタイが参加資格を得ることになれば、それは同時にインドネシアが予選敗退したということから、タイがメダルを獲得するチャンスが広がったことを意味する。タイチームを牽引するのは、才能あふれる若きシャトラー、ポンサナ、そしてプラパカモル/ヌゲリンスリスク組である。一方、イングランドチームはこれまで長い間、男子シングルスを弱点としてきた。この弱点がギリシャで行われるヨーロッパ予選で、足元をすくわれる結果になるかもしれない。とはいえ、強力な男子ダブルスのブレア/クラーク組に加え、サイモン・アーチャーを“特別ゲスト”としてダブルス陣に入れたこと、さらにガファーがシングルスで確実に勝利を収めれば、予想以上の結果になるかもしれない。 また、ドイツはヨーロッパの強国としての伝統がある。トップシャトラーの1人マーク・ツヴィブラー?)が背中の故障から復帰できないとしても、予選は突破するはずである。頼みの綱は、物静かな話し方をする巨漢ビョルン・ヨッピンと、最近、ドイツチャンピオンになったホップ/キンダーファーターのペアだが、オリンピック発祥の地で繰り広げられる予選での活躍いかんで、日本行きのチケットが手に入るかどうかが決まる。順番が最後になったが、重要度では決して引けをとらないインド、香港、シンガポールだが、この3カ国は地区予選で同組となったため、本選へ進む1つの枠を巡って互いに戦うこととなった。この“死のグループ”を抜け出してきたチームは、優勝を狙うチームにとって脅威となる可能性がある。一方、アメリカは、誰を代表チームに入れるかにもよるが、あのトニー・グナワンを前面に、混戦を制して日本に乗り込んでくるかもしれない。もちろん、主催国として参加資格を持つ日本も、自国の大観衆の後押しで予想外の結果を収めるかもしれない。
すべてのチームが本選への勝ち残りを目指している。一部の強豪国以外のチームにとっては、それが最大の目標だ。予選ラウンドがすべて終了した時点で、本選進出を果たした“非”強豪国を詳しく紹介しよう。

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